入賞作品集

コンテストの総評

グランフェイス:LEXデザインオフィス東京 代表: 大熊 一幸氏

今年も全国から選りすぐりの作品が集まり、高いレベルで均衡していることも感じながらも先端のデザインを大変興味深く拝見し審査させて頂きました。その中から選ばれた作品にはさらに強い想いや拘り、そして企画力の素晴さが備わるからこその結果なのかもしれません。生み出すまでの提案力や完成するまでのストーリーは計り知れないと思いますが、今後さらなる飛躍を目指して頂ければ嬉しいことです。
施工部門では、雑木を利用した植栽計画とフレームタイプの商品で演出した研澄まされたエクステリア設計が見受けられるようになりました。パーツは設計者の意図に合わせて自由な構成が出来るのも現在のニーズに当てはまっているようです。美しく添えるだけの空間が今後求めるものは何かを明確にすることも必要になってくるでしょう。
設計部門では、設計者のコンセプトや意図がしっかり伝わってくるものや、空間を平面構成のデザインではなく立体的に捉えた作品も多くなりました。建築のように3Dで構成すると意匠面が増えるため高いデザインセンスが求められていきます。また、CADレベルが向上し、デザイン力と技術力の双方を備え持つデザイナーが増えてきていることを実感したのも大変良い傾向にも思えました。
来年も次のステージはいかなるものかに応える、さらに素晴らしい作品に出会えることを心より願っております。

アトリエ彩 代表: 中尾 きみこ氏

回を重ねてゆくコンテストに審査という形で関わらせて頂けることは大変幸せなことと、今年はそれを強く実感する、大きな変化・特徴の見られた年でした。
まず、今まで地域が集中しがちだった受賞者が各地域に分散したことが印象深く、デザインに積極的に取り組む地域の努力が確かに感じ取れました。
もう一つは、造園(緑)の力を重視した作品が多くみられたこと、特にデザイン部門、プランニング部門とも大賞の決め手はそこにありました。その一方で、現場で施主、特に奥様人気の高い、曲線を用いたエレガントなデザインや、根強い支持のある伝統的和風デザインの作品数が極端に少なくなってしまったことが少々残念です。施主志向の多様性に応えるべく、多様なデザインテイスト毎に洗練された作品が出てくることを強く願っております。
またプランニング部門では驚くほど表現力豊かなCAD作品が表れた一方、手書き図面が数えるほどで、手書きの柔らかさを活かした作品もまた見せて頂きたいと思った次第です。
さらに、エクステリアリフォーム部門、課題プレゼン部門に、オリジナリティ溢れる斬新な作品が登場したことが大変印象的でした。
来年以降にも、きっと新しい変化や斬新な作品が見られるのではと、楽しみに願っております。

株式会社ジイケイ設計 代表取締役社長: 須田 武憲氏

本年より審査員に新しく参加させていただきます。私は主に公共空間の都市環境デザインにたずさわってまいりました。都市環境デザインは「関係のデザイン」ともいわれ、都市の中でのさまざまな領域や要素が、いかにまとまりとバランスをもって調和しているかが重要視されます。
ですから本コンテストの審査にあたっても、個々の作品のデザインの質はもとより、それが存在する都市や風景との関係性や地域性、要素同士のバランス、建築内部から見た外部景観のあり方などを判断基準としました。
エクステリアデザインはプライベート空間でありながら、都市や地域の顔を構成する重要な単位となっていること、その景観や地域の価値を向上させる力を持っていることに着目したコンセプトやプレゼンテーションを期待しています。
本年のパブリック部門ゴールドデザイン賞は、丁寧な景観・地域性の分析をデザインに反映させた好例として評価しました。
私といたしましては、パブリック部門が本コンテスト全体を牽引できるよう、更なる発展に少しでもお役にたてればと思っております。

株式会社扶桑社 「新しい住まいの設計」編集長 : 鈴木 康之氏

最近、住宅雑誌では、人気企画として「庭特集」が多く組まれています。それも以前とはまったく違う切り口で。
それは「ガーデニング」の範疇を超え、「外の空間を暮らしにどう、取り込むか?」をテーマにした特集であるということ。「ガーデンルーム」「アウタールーム」など、庭をもう一つの部屋と楽しもう!という企画です。まさに、エクステリアデザインが主役の時代到来を感じています。
今回の応募作品を審査させていただき、各作品のレベルの高さに、それは確信に変わりました。
まず、ミューテリアライフ部門ではベーカリー店舗のリニューアルがゴールドデザインに。ブロンズでも、レストランのオープンエアーデッキの事例が選ばれましたが、このアイデアは一般の住宅でも実現したい工夫が散りばめられています。
デザイン大賞が選出されたトータルコーディネート部門も、激戦でした。大賞作品の素晴らしさ勿論ですが、ゴールドに選ばれた作品にも唸りました。一般的な規模の都市型住宅ですが、玄関アプローチを斜めの動線で自然の林を抜けるように配された植栽、Mシェードの下にスリットを設けた箱型の自転車置き場は。駐車場との適度な距離感を生み出し、玄関アプローチに見事な「世界」を生み出しています。
また、リフォーム部門は「何もなかった場所に、この商材を使って、こんな物語のある空間が生まれるんだ!」と感嘆することしきりでした。
プレゼン課題部門にも、ストーリーのある力作が揃っていて、1つ1つの作品に引き込まれました。提案力で建物と街の間に魅力的な「場」がたくさん生まれるのだと!
来年以降も、暮らしを豊かにするエクステリアデザインの提案、楽しみにしています。