入賞作品集

コンテストの総評

GRANFACE///LEX-Design Office東京 代表: 大熊 一幸氏

みなさん、コンテスト受賞おめでとうございます。一年を通して集大成となる作品に結果が結びつくことは大変喜ばしいことです。今年の審査会では、エクステリア業界のデザイン力・設計力・提案力に変革が現れ始めた年だと実感しました。古くは囲いを作るだけ、金物を並べるだけという簡単な施工力で構成する業界でしたが、昨今は、金物メーカー様の商品力や資材メーカー様が持ち込む輸入資材力も加わったことで、エクステリア業は幅広いスタイルに対応した多彩な表現が可能になりました。それらが変革に大きな影響を及ぼしているように感じています。さらに、その商材力をうまく活用して空間デザインに取り入れ、デザイン力の向上とともに、設計構成により生まれる外部空間をステイタスとして際立たせる業界になっていることに気付かされ、大変嬉しく思いました。我々は今後、支えてくれる企業力に頼り恵まれた業界であることを忘れず、デザインバリエーションと商材知識を蓄えてながら、幅広いニーズに対応したワンランク上の提案が出来る喜びを感じ、さらなる作品が生まれることを心より願っております。

アトリエ彩 代表: 中尾 きみこ氏

最終審査の前の二次審査から参加させて頂いてるのですが、今年ほど難渋したことはありませんでした。 特にファサード部門については、ひとまず絞らせて頂いた後の約20作品の殆どが、建物との一体感、植栽デザインにも配慮され、過去の上位賞に近いレベルで、そこからの選考は大変でした。また、エクステリアリフォーム部門については、これからのリフォームの在り方を示唆する作品が印象的でした。過去には、リフォーム後のデザイン性とビフォーアフターの大きな変化が評価される作品が多かったのですが、今回登場したのは、平均的住まいが抱える問題点を解決し、リフォームで新しい価値が付加された作品でした。さらに新設のパース部門に、独創性の感じられる作品が登場したことは嬉しい驚きでした。改めて過去数年の作品集を見返してみると、魅力的な受賞作品の優れた点が、今回の応募作品に数多く反映されていると感じられました。 今後もきっとエクステリアデザイン全体をさらに一歩前進させる、そんな作品が登場してくれることと、強く期待致しております。

株式会社GK設計 代表取締役社長: 須田 武憲氏

私として4年目となる本コンテストの審査を終えた。今年度の作品群を見て感じたのは、応募写真がとても高質になったこと。審査する上で写真の良し悪しに囚われず、本質的な空間性を見るようにはしているが、やはり良い写真は作品の主張をより一層訴求する重要なメッセージであることに変わりはない。今後の参考としていただきたい。審査に当たって常に念頭においているのは、計画構想において、その場所の中だけで領域を閉じてしまうのではなく、街に対して何らかの価値を提供しその街全体によい影響を与えると考えて取り組まれているか。すなわち街に対して意識が開かれているか、作品の持つ社会への訴求力やメッセージ性が明確になっているか、このふたつの要素が受賞には不可欠だ。それは、エクステリア製品自体が敷地内だけてなく、外部空間の関係性の中で成立するだけのポテンシャルと、調和という優れた立ち位置を獲得できる力を合わせ持っていると信じているからである。今後本コンテストに応募を検討されている方々に申し上げたいのは、是非ともこのふたつの視点をもって、これからの作品を創り続けていただきたいということである。

遊空間設計室 代表: 高野保光氏

応募作品のプレゼンテーションの高さと年々事例のレベルが上がっているということは、大変すばらしいことだと思います。さらに、よりよいエクステリアデザインをするために、今後なにが必要になってくるのでしょうか。建築と外構と近隣の環境は本来一体のものですが、現在は経済性や思考方法などから、個別にデザインされ施工されることが多くなっています。本来、建築の「内」と「外」の間にこそ「人々の居場所」をデザインする大切なものがあることを考えると、今後はその領域を超えてお互いが共にその「場」をつくる時代にしなければなりません。建築家 篠原一男は、半世紀も前に「どの分野でも人間の素朴な能力が活動しうる場面が次第に少なくなっている」、また「どの分野も一方的に技巧化、複雑化だけが進んでいる」(『住宅論 』 鹿島出版会)と警鐘を鳴らしていました。また現在は、天文学的な量の情報が仮想空間に溢れています。それに対し私たちの「身体」と「感覚」は、昔と比べほとんど変わりがなく、情報を受け入れる人間としての限界もあるということです。デザインの現場に立ち、領域を横断し、自分の目で観察し、「もの」を考え、個別性を求めることは、情報を限定していくうえで時に必要になるでしょう。「AIに代表される進化」と「人間の素朴な能力」、それら両極を開いたり閉じたりする中にデザインのあり方や未来が見えてくるのではないかと考えています。